中国人と宝石

中国人の男性は宝石に詳しい人が多いです。
「なぜ?」と思うでしょうね。

中国の歴史を見ても分かるように政権が変わるごとに、天国と地獄ほどの生活に変化があるのです。時には前政権とかかわりのあった人は命すら狙われる訳で、説明の必要もないと思いますが、夜逃げのようにしてその土地を離れたのです。着の身着のままで息を殺して立ち去るわけですから一切のものは置き去りにする中、ポケットに入れて次の新天地で生活の助けになるのが宝石でした。どこの地に行っても、担保になり、お金になるのが金銀宝石。
ただ金も銀も重く、過酷な長旅をするには重荷で、宝石が最適とされたわけです。

そんな歴史から中国人の男性はいい宝石を持ち、万が一のために備えることを身に着け、それを石のまま持ったり妻の身に着けたりしていた訳です。
さて、一度宝石を持つとそれ以上の良い石がほしくなるのが人間。そして、だんだん目がこえてくると又ほしくなる。いつの間にか少しずつ買い集めた宝石いっぱいになると自慢したくなるのも人間。

こんな話があります。ある日私は香港の富豪のおじさまに「いいものを見せてあげる」と彼の家のリビングに通されました。私が宝石好きであることを知っていたのでしょう。
恭しくベルベットの箱から取り出したのは翡翠の指輪。
「これは僕が初めて買った翡翠だ・・」
「わああー」と声をあげて、私はその美しさに心躍りました。
ところが、その感動も冷めやらぬうちに、もう一回り大きい翡翠の指輪を目の前に出され思わず「おおきい・・・」とつぶやいたのを覚えて居ます。
それからずっと、次から次に出される度に私はため息がでるばかり。そして最後のとどめは、横長の翡翠。まるでガラスのように透明で、色は気品にあふれる緑。艶はまるで黒蜜のように甘く輝き、飲んでしまえるのではと思うほどおいしそうに見えました。
「これは最高級品かもね。」と楽しそうに話しながら、おじさまは私にウィンクをして一言付け加えました。
「さあ、じゃここで一つ面白いことを見せてあげよう。いいかい?」ともう一度最初に見た翡翠を目の前に出されたら・・・どうでしょう!なんとあんなに感激してみていた翡翠が透明感もなく色褪せて霞んで見えました。なぜ?
「これが宝石の見せかたさ。だんだん良いものを見せると全部良いものに見えるのさ。だから、ファッションショーはみんなスポーティなウェアからタウンウェアに始まり、イブニングに向かっていき、そして最後は人生で最高のドレス、純白のウェディング!!!と言う順番だ。」
(これは余談ですが、あれ以来私はなにを見せるのもこの順番を使っています。)
さて、このおじさまは1997の香港返還の時にはすでにカナダに大きな家を買い、カナダ国籍を取得していました。

あの宝石は全部ポケットに入れて行ったのでしょうか?
時代が変わり人の考えも変わりましたが、不変のモノもまだまだありますね。