手袋

いつでしたか、ある冬の夜、平川町にある、私のお気に入りのイタリアン・レストラン「エリオ」へ友達と行った時の事でした。

支払いを済ませ、見つくろいをしていたら、突然あるイタリア人の男性が私の手を取ったのです。「なに?!」と振り返ると、その人はスラッとしたイケメン。
取ったのは、私の手ではなく私の手袋でした。
「ちょっと〜」と言う間もなく、彼は私の手袋をパンパンと平手でたたき、レジのテーブルの端に手袋の指の部分を乗せ、その上に自分の左手を重ね、右手で手袋をグイグイ引っ張るんです。それを何回か繰り返しているうちに、私の手袋はアイロンがかかった様にピシッとしました。あまりの見事さに口を開けないように見ているのが精一杯。

彼はひとしきり終えると、私に「マドモアゼル」と手袋を返してくれました。そして、スッと出した名刺の名前を見てびっくり、彼の名前は「Sermoneta」 私の手袋のメーカーのオーナーだったんです。
「あっ、あー!わっわっわぁ!」と言っている間に、Sermonetaさんは手を振って、レストランの奥へ行ってしまいました。

「僕の手袋を使ってくれてありがとう」と言うジェスチャーだったんでしょう。

イキな人ですね。にくいと言うか、かっこいいと言うか・・・・・そして、私の手元に戻った手袋は新品でした。

ちなみに、私の隠れた手袋のコレクションは、20代から始まり、今では引き出しいっぱいになりました。その中から又版画の手伝いに行く手袋がいくつか生まれるのです。